私は岡山県で農業(稲作)を営んでいます。
昨年トラクターを買い替えた際、一回り大型の機種を購入したため、大型特殊免許が必要になりました。
そこで、大型特殊免許(農耕車限定)を取得してきました。
普通の大型特殊免許を取得するには10万円前後の費用がかかるため、3万円程度と比較的安く取得できる「農耕車限定の大型特殊免許」を選びました。
この記事では、大型特殊免許(農耕車限定)を取得するまでの流れを、私の体験に基づいてまとめています。
今後必要になりそうな方は、ぜひ参考にしてください。
なお、講習や試験に関する写真は撮影していないので、その点はご容赦ください。
目次
大型特殊免許(農耕車限定)とは
「大型特殊免許(農耕車限定)」とは、大型特殊自動車の中でも、トラクターなどの農耕車に限り、公道での走行が認められる免許のことです。
トラクターやコンバインといった農耕車は、その大きさに応じて「小型特殊自動車」または「大型特殊自動車」に分類されます。
小型特殊自動車に分類される農耕車で公道を走る場合、普通免許、または小型特殊免許があればOKです。
しかし、基準となる大きさを超える農耕車で公道を走る場合は、大型特殊免許が必要です。
なお、私有地内でのみ大型の農耕車を使用する場合は、大型特殊免許は必要ありません。
大型特殊自動車に分類される農耕車の条件
大型特殊自動車に分類される農耕車の条件は、以下の基準を1つでも満たさない農耕車です。
- 長さが4.7m以下
- 幅が1.7m以下
- 高さが2.0m以下(ただし、ヘッドガードを備えた場合は2.8m以下)
- 最高速度が15km/h以上
普通の大型特殊免許と大型特殊免許(農耕車限定)の違い
普通の大型特殊免許と大型特殊免許(農耕車限定)の違いは以下の2点です。
- 運転できる車種の数
- 取得にかかる費用
普通の大型特殊免許を取得した場合、ラフタークレーンやホイールローダー、除雪車など、さまざまな大型特殊自動車で公道を走ることができます。
一方で、大型特殊免許(農耕車限定)の場合、公道の走行が認められるのはトラクターやコンバインといった農業に特化した大型特殊自動車だけです。
また、大型特殊免許を自動車教習所で取得する場合、普通免許を持っていても10万円前後の費用がかかります。
一方の大型特殊免許(農耕車限定)の場合、免許証交付手数料などを含めても、免許取得にかかる費用は3万円前後で済みます。
農耕車のみを運転する予定の人にとって、農耕車限定の技能講習・試験は、コスト効率が高く、手軽な取得方法です。
大型特殊免許(農耕車限定)の取得条件
大型特殊免許(農耕車限定)の取得条件は以下の通りです。
通常の大型特殊免許の取得条件と同様です。
- 18歳以上であること
- 両目の視力が0.7以上かつ、一眼の視力がそれぞれ0.3以上であること(眼鏡・コンタクト可)
- 赤色・青色・黄色の識別ができること
- 10mの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえること
大型特殊免許(農耕車限定)の取得方法【岡山県の場合】
岡山県の場合、岡山県・JA全農おかやまなどが主催する「大型特殊自動車(農耕車限定)技能講習会」を受講し、免許試験に合格することで、大型特殊免許(農耕車限定)を取得できます。
ただし、申込期間や募集人数に限りがあるため、受講を考えている方は早めに情報を入手し、申請手続きを行う必要があります。
大型特殊免許(農耕車限定)の技能講習会に申し込む流れ【岡山県の場合】
ここからは、私が農耕車限定の大型特殊免許を取得した流れを記載します。
まずは、技能講習会に申し込む流れ(岡山県の場合)を紹介します。
①岡山県のホームページで開催要項をチェックする
まずは、岡山県のホームページで、大型特殊自動車(農耕車限定)技能講習会の開催要項を確認しました。
令和6年度の場合、開催要項は2024年4月5日に掲載されました。
開催要項は年度が明けるとすぐに掲載されるようなので、受講をお考えの場合は、年度明けすぐに、お住まいの都道府県のホームページをチェックすると良さそうです。
なお、令和6年度の岡山県の大型特殊自動車(農耕車限定)技能講習会の詳細は以下の通りでした。
日程 |
|
場所 |
|
定員 | 各回10名 ※希望者が定員を超過した場合は抽選で決定する |
受講料 | 25,000円(講習料・会場借上料等) ※別途、運転免許試験手数料(4,050円)、運転免許交付手数料(2,050円)が必要となる |
申込手続き | 所定の申込書に必要事項を記入し、令和6年5月2日までに事務局に郵送または電子メールで提出する |
情報公開から申込締め切りまでの期間は約1ヶ月でした。
情報のチェックが遅れると、申込を逃してしまう恐れがあるので注意してください。
参考:令和6年度 大型特殊自動車(農耕車限定)技能講習会開催要領
②必要書類を提出する
次に、必要書類を提出します。
岡山県の場合、岡山県ホームページまたはJAグループ岡山ホームページに掲載されている”申込書”に必要事項を記載し、事務局に郵送または電子メールで提出する形でした。
提出先となる事務局は「JA岡山中央会」でした。
情報公開から締め切りまで約1ヶ月と期間が短いので、早めに済ませましょう。
③受講料を振り込む
必要書類を提出すると、5月中旬を目途に主催者から受講可否の通知が行われます。
私は電話で受講可の通知をいただき、後日、受講料の振込先などの詳細が書かれた書類が郵送されてきました。
書類を確認して、受講料25,000円を指定の口座に振り込みました。
振込期限は受講日によって変わります。
私の場合、受講日が10月だったため、振込期限は9/6(金)と、かなり余裕がありました。
このあたりは、お手元に届いた書類をよくご確認ください。
④技能講習会に必要なものを準備する
受講料の振込と同時に、技能講習会に必要なものを準備します。
私が受講した際の必要なものは以下の通りでした。
- 運動靴
- 帽子(つば付き)
- 筆記用具(黒ボールペン)
- 運転免許証
- 免許試験用の写真(縦3.0cm × 横2.4cm:胸から上)1枚
- 免許試験手数料・貸車料(4,050円)
- 眼鏡・補聴器(必要な方のみ)
- 傘・長靴(雨天の場合)
- トラクターの運転技術研修テキスト(送られてきます)
⑤運転免許申請書類の準備
郵送されてくる書類の中に、以下の書類があります。
- 運転免許申請書
- 技能試験受験手数料納付確認書
- 交通事故・交通違反の申告書
- 質問票
- 誓約書
書き方例も同封されているので、それに倣って、必要箇所に記入しておきましょう。
なお、岡山県の場合、技能講習会の中でこれらの書類に記入する時間をとってくれたので、不安な場合は記入しなくても大丈夫でしょう。
以上が、技能講習会に申し込む流れです。
事前に準備しておくものもあるため、余裕を持って準備を進めましょう。
受講料の振込、物品準備が終わったら、あとは受講日を待つだけです。
大型特殊免許(農耕車限定)の技能講習会の流れ【岡山県の場合】
それでは、技能講習会の様子を紹介します。
技能講習会は、以下の日程で行われました。
時間・内容 | 場所 | |
10月4日(金) | 7:30〜9:00 試験コース下見 | 岡山県運転免許センター |
10:00〜12:00 オリエンテーション | 岡山県農林水産総合センター農業大学校 | |
10月7日(月) | 9:00〜17:00 実技講習 | 岡山(円山)自動車学校 |
1日目①:試験コース下見【運転免許センター】
初日の朝は7:30に岡山県運転免許センターに集合し、試験コースの下見をしました。
JAの担当職員さん誘導のもと、地図を見ながら、実際の試験コースを歩いて確認します。
ただコースを歩くのではなく、実際の試験中に行う動作や注意点を確認しながら、コースを歩きました。
非常に丁寧で、わかりやすい説明でした。
1日目②:オリエンテーション【農業大学校】
試験コース下見が終わったら、農業大学校に移動して、オリエンテーションを行いました。
オリエンテーションの内容は以下の通りです。
- 事務連絡
- 座学(試験コースの確認)
- トラクターの乗降練習
- 必要書類の作成
座学では「コースを覚えることが合格のための最大のポイント」とレクチャーを受けました。
運転免許センターの地図が書かれた紙に、何度も何度も、コースを書いて覚えるという作業をしました。
「トラクターの乗降練習」では、実際のトラクターの使って、乗降の手順を確認しました。
自動車教習所で習うのと同じように、乗車前は指差し確認から行います。
1つずつ丁寧に覚えていけば、難しい所作ではありません。
「必要書類の作成」では、事前に郵送されてきた、以下の書類を作成しました。
- 運転免許申請書
- 技能試験受験手数料納付確認書
- 交通事故・交通違反の申告書
- 質問票
- 誓約書
私は事前に書き込んでいましたが、2つほど不備があったため、新しい書類と交換してもらい、再度記入しました。
以上の工程で、予定通り12時に終了。
近くのお店で昼食をとり、その日は帰宅しました。
2日目:実技講習【自動車教習所】
技能講習2日目は、トラクターに乗車して、運転方法・走行方法を学びます。
場所は岡山市東区の円山自動車学校でした。
開始時刻になると、まずは1日目の復習。
20分ほどで、試験コースの確認をしました。
その後は外に出て、トラクターを使った実技講習。
5名ずつの2班に分かれ、午前・午後で、以下の講習を受けました。
- 左折の仕方、一旦停止と左折方法
- 踏切、右折の仕方、方向転換(右バック)
- 信号、左折後すぐに右折、方向転換(左バック)、右折の注意点
- 見通しの悪い交差点、障害物、指示速度、速度が出た状態での右寄せ、確認の競合
実技講習の流れは以下の通りでした。
- 受講者はトラクターに乗車し、運転する。
- スタッフが後ろから車で追尾し、トランシーバーで指示を出す。別スタッフはiPadでトラクター走行の様子を録画する。
- 次にトラクターを運転する受講者も追尾車に乗り、運転の様子を見る。
- 降車後、iPadの映像を見ながら、スタッフからのフィードバックを受ける。
最初は「1人だと運転手順がわからなくなりそう」と不安に感じましたが、トランシーバーから指示を貰えるので、安心して講習に臨めました。
4つの練習をそれぞれ4回程度走ることができた上に、JAの担当職員さんの教え方が非常に丁寧だったため、運転方法・走行方法はすぐに覚えることができました。
クラッチやブレーキの感覚をつかめれば、それほど難しくはないでしょう。
また、他の受講者と情報交換をして、それぞれの技術を高め合う時間も重要だと感じました。
講習自体は予定より早く終了しましたが、「時間があるので、不安な人は残って練習していいよ」と言われたので、1回だけ居残り練習をして帰りました。
帰宅後は、翌日の試験に向けて、試験コースを頭に叩き込みました。
大型特殊免許(農耕車限定)の試験と免許交付までの流れ【岡山県の場合】
3日目は試験です。
試験に合格すると、大型特殊免許(農耕車限定)を取得できます。
会場は岡山県運転免許センターでした。
試験の流れ
試験の流れは以下の通りでした。
- 朝7:30に岡山県運転免許センターに集合
- コース発表、コース下見
- 技能試験申込手続き
試験手数料支払い、身体検査、申請書類提出 - 試験開始
朝8時になると、試験コースが発表されます。
コースの下見をして、技能試験の申込手続きへ。
試験手数料を忘れないようにしましょう。
試験は、1人ずつ順番に行います。
順番はJAの担当職員さんから発表され、私は最初でした。
時間になると試験官から簡単な説明を受けます。
採点方法やコースを間違えたときの対処法などを共有してもらえるので、よく聞いておきましょう。
その後、運転免許センターのトラクターを使って試験を受けます。
試験は一発勝負です。
試験前に「慣らし運転」ができるので、そこでクラッチやブレーキの感覚をつかみましょう。
試験官はトラクターの後ろから車で追尾して、採点を行います。
緊張しますが、1つ1つの動作を丁寧に行いましょう。
なお、私が受講した際は、午前に5名、午後に5名、試験を受けました。
進行スピードによって、午前午後の受講者数は変動するようです。
合格後の流れ
合格発表は、自動車の免許証と同じように、電光掲示板で発表されました。
午前受講者は5名全員が合格し、免許交付の手続きへ。
写真撮影や運転免許交付手数料(2,050円)の支払いなどを済ませ、待つこと1時間。
「大特車は農耕車に限る」の文字が入った運転免許証が交付され、終了となります。
終了時刻は13時を過ぎていました。
必要な手続きから免許証交付までの時間が想像以上に長かったので、本など、時間を潰せるものを持っておくと良いでしょう。
なお、試験が午後になった方々は、途中で昼食をとりに行っていました。
まとめ・感想
以上が、大型特殊免許(農耕車限定)を取得した際の体験記でした。
JAの担当職員をはじめとするスタッフの方々が非常に丁寧だったため、安心して受講することができました。
私が感じた合格のポイントは以下の通りです。
- コースを覚えること
- 1つ1つの動作を声出し確認すること
- クラッチとブレーキの感覚をつかむこと
自動車教習と同様に、普段の運転では意識しない動作が多いため、声出し確認をして、忘れないようにするのがポイントだと感じました。
また、私の場合は練習用トラクターと試験用トラクターでクラッチとブレーキの感覚が異なったため、それぞれの感覚を早めにつかむことを意識しました。
とはいえ、合格率の高い試験であり、よほど大きなミスをしない限り、合格が見込めるでしょう。
年に数回しか開催されない貴重な機会なので、ぜひ有効活用してみてください。
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